作文や小論文は、個人差はありますが、長文読解よりも比較的早く上達する傾向があります。
授業を重ねるごとに文字数が増え、表現が具体的になり、論の筋道が整っていくからです。
生徒さん自身も、「書けるようになってきた」という実感を得やすい科目です。
次第に、生徒さんは「伝える喜び」を感じながら文章を書くようになります。
この段階に至ると、物事を見る視野は、出会った当初とは比べものにならないほど広がっています。
「自分は社会の一員である」という感覚が、自然と芽生えてくるのです。
そして、次のような問いが自発的に生まれるようになります。
「なぜこのようなことが起こるのだろう」
「その背景には何があるのだろう」
「どのような立場の人が関わっているのだろう」
知識を増やすだけではなく、物事を相対化して、因果関係を考える力が育っていきます。
つまり、思考の解像度が上がるのです。
さらに、
「では、どうすればよいのか」
「自分にできることは何か」
という問いにも、自分の力で向き合えるようになります。
多くの場合、作文・小論文は入試対策として位置づけられます。
しかし、私が考える本当の価値はそこだけではありません。
作文・小論文は「書く」科目ではなく、
「考える」科目です。
思考を深めて構造を整理し、自分の言葉で組み立てる。
そしてそれを、他者に伝わる形に整える。
この過程こそが、人生のあらゆる場面で土台となる力だと考えています。
長文読解は「読み取る力」を鍛えます。
作文・小論文は「考えを組み立てる力」を鍛えます。
似ているようで、養われる力は異なります。
文章力とは、単なる表現技術ではありません。
それは、思考を言葉にし、自分の立場を定める力です。
こうした「思考の言語化」は、
やがて自分の人生を、自分の言葉で考え、自分自身を支えていく力にもなり得るのです。